ハツコイぽっちゃり物語


《――これで第82回卒業証書授与式を閉会します。卒業生が退場しますので……――》


再び教頭先生のアナウンスに場が緩みだしたかと思えば、退場曲が流れ、大きな拍手に包まれた。


次々と退場していく卒業生は泣いたり、笑ったり、照れてたり……色んな表情をして去っていく。


先輩を見つけると目が合って小さく手を振られた。
私も同じように振り返す。


私ちゃんと笑えてるかな。
大丈夫。笑えてる。
少しぼやけてるけど。それは溜まってるだけだ。泣いてなんかない。


卒業生全員が退場すると曲が止まり、一気に場が緩む。

ちーちゃんも隣で背伸びをしている。
私は目元を拭いて、そっとちーちゃんに寄りかかった。


頭を撫でてくれる彼女の手が優しくてそのまま寝てしまいそう。


学年主任の呼びかけにより全員が教室へ戻る。


その途中、友だちと混ざって話をしている恋ちゃんと目が合った。
ドキッとしたのも束の間で、人混みの中へ消えていく彼にちーちゃんが声を低くして「なにあの顔」と不機嫌そうに言う。


それに「ははは」と苦笑いをした私は“仕方ない”と思うことしかできなかった。


あんな冷たい表情(かお)は私も初めて見たから。