それからは、国歌斉唱や卒業証書授与、校長先生のお辞、祝辞がされ、祝電披露では懐かしの先生の名前に生徒中が歓喜していた。
ここまで長く感じた式も終盤を迎えようとしている。
在校生の送辞が終わると、卒業生の答辞が始まった。
壇上に上がって丁寧に深々とお辞儀をした人を見て目を見開く。
「……先輩」
思わず声に出してしまう程、驚いた。
静かに折りたたまれた紙を広げ、声を発する。
《暖かい陽の光が降り注ぎ、桜の蕾も膨らみ始め――》
淡々と落ち着いた声音で読んでいく先輩をただただ見つめる。
すごいな、と思いながら。
柔らかな声に懐かしさを思い出す。
この声がとても安心できて大好きで。
1ヶ月前に別れた私たちだけど、お互い良き先輩後輩の仲であることは間違いなくて、とても信頼している大切な人には代わりはない。
どこまでも優しいあなたに私は何度も甘えてしまったけれど、『困ったこと一度もない』、『迷惑だなんて思ってない』と言ってくれたことがどれだけ救われたことか。
私は先輩に恋をしたこと一生忘れない。
そう先輩を見て思うと、パチッと目が合った気がした。



