ハツコイぽっちゃり物語


「日が落ちてきたね。そろそろ帰った方がいいかな」

「……そうですね」


外はオレンジ色から群青色へ移り変わろうとしている。

時計を見るとまだ完全下校時間ではないけど、私たちは少なくとも30分は話していた。


もう体感は1時間くらいは経っている。
あっという間だった。


別れ話のはずがほとんど思い出話になっていた。だからこそたくさん泣いてしまった。目元がヒリヒリしてる。


2人で窓の外を眺めて、もう暫くだけと余韻に浸っていると、今じゃ心地のいい音を奏でている吹奏楽部からプワアァ――と思い切り音程が外れた音に顔を合わせて笑った。



「もう帰ろっか……と言いたいところだけど、俺はもう暫くここに居るから。米倉さん気を付けて帰ってね」

「はい」


私を見て微笑む先輩はどこまでも優しい。
だから甘えてしまいそうになる。
そう、以前の私なら。