ハツコイぽっちゃり物語


電車を降りて歩くこと20分。
私の家があるマンションに辿り着いた。

エレベーターを待っている間もふわふわしてて、点滅しているフロアの数字があっという間に1Fを指していた。

トビラが開いたのを見て進もうとした時、中から恋ちゃんが出てきた。

見慣れたスウェット姿だけど、なんか今日は別人のよう。

顔を合わせるなりちょっと気まずくなる。

彼は「おつかれさま」とだけ言って私の横を通り過ぎて行ってしまった。
つい背中を追ってしまいそうになる。

去っていった方をみて安心してる自分がいる。

ちょっと気持ちほっとしてるのは恋ちゃんが普通でいたから。
そう、いつもの恋ちゃんだった。

怒ってる様子もない。

今朝、謝った時も普通だったし。
恋ちゃんは「なんで千桜が謝ってんの」て可笑しそうにしてたし。

「俺が勝手に怒ったから悪くないよ千桜は」とも言ってたし。

結局、昨日の彼は怒っていたみたい。
理由はあやふやにはぐらかされてしまったけど。


……なのに、なんで私はこんなに不安がってるんだろう。