「ふふっ、大丈夫?米倉さん」
肩を叩かれた拍子にアホみたいな声が出た。
振り向くと佐波さんが笑ってる。
「……だいじょう、ぶ」
じゃないよ!って本当は言いたい。
相手がちーちゃんだったら言ってた絶対。
「あはは。全然大丈夫じゃないじゃん。米倉さんておもしろいね」
そう言って笑う姿に首を傾げる。
なぜに涙まで浮かべて笑ってるんだ、佐波さん……。
「そ、そんなに?」
「だって、体全体使ってたんだよ?こんなして」
佐波さんは先程私が羞恥なゆえにやっていたであろう動きをしてみせた。
その動きをみて絶句する。
それはもう酷すぎた。
面白い通り越して変人だよこれは。
私なら引くよ……。
「さ、佐波さんもういいよ!恥ずかしいからっ」
「え、あ、そう?」
「佐波さんって優しいね。ちーちゃんだったら迷わず『ただの変人』とか言っちゃうんだよ」
「ちーちゃん?……ってああ!米林さんか。へぇ、意外。……なるほどギャップですか。萌え萌えキュン!ですな」
「おお!!そう!そうなんだよ!!萌え萌えキュンなんだよ!!」
「いいね!ギャップ萌え」
「佐波さん〜!分かってくれますか!嬉しい!」
話の波長が合うとはまさにこの事か、と実感するみたいに私は飛び跳ねる勢いで話す。
「あ、これからの付き合いだし私のこと名前で呼んでよ」
「うん!これからよろしくね晴菜ちゃん」
「よろしく千桜ちゃん」
窓の片隅から覗く夕陽に照らされながら
私たちは渡り廊下のど真ん中で握手を交わした。



