ハツコイぽっちゃり物語


「私もいつかこんな夫婦になりたいなぁ……」


仲の悪い夫婦より、断然仲良い夫婦がいい。


毎日笑顔が絶えなくて、『おはよう』も『おやすみ』も、『行ってらっしゃい』も『ただいま』だって、好きな気持ちを伝えるみたいにキスしたりさ。


私の理想の夫婦像は私の両親だから。
それを越えられる未来はきっと無いかもしれない。
もしかしたら結婚なんてしないかもしれないし。だってこの恋はもう終わったも同然だから。


最後の洗い物を終えた私は後ろにいるであろう彼に一言声を掛けようと振り向く。



え――。



息を止めたと同時に瞳孔が開いた。
私を見下ろす彼があまりにも近くて……。

だけど彼も同じように瞳を大きく開いていた。


お互い喋られなくなってしまったみたいに、「え、あ、」と戸惑い口に出す。


ハッとしたように恋ちゃんは私と距離をとった。



「びっ……くりした……」



そう言ったのは恋ちゃんで、私は胸を押えている彼を見るばかり。


言葉がでない。出せない。


びっくりしたのは私の方だよ。
下手したらキスしてたかもしれない……。

だって、鼻先が触れるくらい近かった。



「あ、これ洗い終わったやつ?ここでいいんだっけ?」

「え、あ、うん」


何とか応えられたけど、ドキドキは続いている。
これ、治まるかな。
ここに居るのだって今辛い。恋ちゃんのこと見れない。


だって、あんな近い距離……あと少しでキ……――!



「わ、私、お風呂!!」


も~~~っ、逃げるしかないじゃん!