中学校を卒業する日。
教室に居ないのを確認し、恋ちゃんを探しに行った時、たまたま通りかかった階段で恋ちゃんを見た。
急いで陰に隠れた私は、盗み聞きするつもりなんてなかった。
けど、足が張り付いてるみたいに動けなくて。
恋ちゃんは告白されていた。噂では聞いたことはあったけど、告白現場に遭遇したのは初めてだった。
好きな人の告白に遭遇だなんて見たくもなかった。でも足が動かない。そして耳に届いてしまったんだ。
『ごめん。俺好きな子いるから』
女の子の切なげな声を聞きながら私も彼女と同じことを心の中で言った。『そっか』と。
涙なんか出てこなかった。むしろなんで気づかなかったのだろうって。ずっと近くにいたのに。なんで恋ちゃんが恋してることを察知出来なかったんだろうって。
それと同時に、これは恋じゃなかったのかもしれないと思うようになった。
幼馴染だから。いつも助けてくれるから。こんな私といつも一緒にいてくれるから。恋ちゃんに抱いていたトキメキやドキドキも全て恋によるものじゃない。
そうやって恋してたことを帳消しにしたんだ。私は――。



