笑い声うるさい。早く消えてよ。私の前から居なくなって!


そう声を出したいのに出せなくて歯を食いしばるしか出来ない私はなぜか心の中で『恋ちゃん』と連呼してる。


恋ちゃん助けて。恋ちゃん、恋ちゃん……っ。


なんで私は恋ちゃんを呼んでるんだろう。
そう思った瞬間誰かが私の前に現れた。


サラサラした黒髪。
華奢な体格の割に意外と筋肉質な彼。

中学生の恋ちゃんだ。


『千桜、大丈夫?』


一瞬顔をこちらに向けた彼に胸の奥がキュッとした。


ああ、そうだ。この時だ。恋ちゃんがすごくかっこよくみえたのは。

周りがキラキラして見えて、まるでヒーローのような王子様。
そして、幼馴染じゃなく、ちゃんと“男の子”として意識したのは。


――そうだ。私、恋ちゃんに恋してたんだ。