ハツコイぽっちゃり物語


シフト決めはいつも人数が少なくなる最後に名前を書く。

書いたら即解散する委員会なため、図書室のカウンターには人が集ってる。

私だって早く書いて帰りたい。
でも私はあえて、残ってたりもする。
本を読みながら。


本をめくるタイミングに合わせて時折視線を向けるその先に葵生先輩がいる。

この時間(とき)が私の至福のひとときだ。

でも今回はちょっと違う。

それは――。



「あ、もうそろそろ書けるんじゃない?人数減ってきたし」

そう佐波さんがいるから。

今年の委員会のパートナーは女の子。

だから先に帰ることもないし、何より会話がある。私にとってはもう救世主のようだった。とても嬉しいんだ。

去年はもうほとんど私任せだったからさ……はは。


彼女が立ち上がるのをみて私も立ち上がる。

「どこにする?」とカウンターの上に置かれているシフト表に目を通しながら2人して「うーん」と唸った。

ほとんどの曜日が埋まってるけど、放課後に埋まってない箇所が2つ。

佐波さんと相談して決めたのは金曜日の放課後。

シフト表に名前を書きながらほんの少し頭の片隅で、先輩はどの曜日にするのかな、なんて思う。

一緒にならないかな、とか思ったりするけどそんな奇跡起こるとはまず思わないし。

でも起こったら嬉しいな、とか。
一緒になったら私大丈夫かな、とか。

そう思ってしまってるってことは欲張りなんだと思う。