「私もその場での思いつきだったんで。上手くいく保証なんて1ミリも考えてなかった。でも……」
「みえたんだね」
この言葉に不意をつかれたのか彼女も驚いた様子でこちらを見上げた。
一瞬目が合って笑ってみせる。
俺もそんな気がした。
米倉さんを見てたからすぐその変化に気付かされた。それは彼氏である俺だからかもしれない。
米倉さんは俺といる時楽しそうだし、『大好きです』とも言ってくれる。
素直に嬉しい。俺も米倉さんのこと好きだし、色んな表情を見せてくれるのが堪らなく愛しい。
でも、米倉さんはふと暗くなることが度々みえた。
それは大体いつも決まって俺がいなくなる時。
最初は寂しいからとか勝手に思って『またね』と言った後にキスをする。すると照れながら笑ってくれるから安心してた。
自惚れてた。でも本当は――。
「やっぱ幼馴染くんには適わないのかなぁ……」
我ながら情けない笑い方をする。
でも、本当にそう思ってしまうんだ。
『適わない』なんて思いたくなかった。
気付いた時にはもう遅い。
もっとはやく対処しておくべきだったのかもしれない。
『米倉さんにもう近付くな』
と言えたらこんな事にはならなかったかもしれない。
でも、そんな言える柄じゃない。俺は。
そんな勇気すらない。
こんな俺を米倉さんは『かっこいい』と言うけれど、そんなことないよ。
俺は情けないやつで、好きな人に『側にいて』とも言えないやつなんだから。



