水族館を生み出した人って本当に凄いよね。
本当に海の中にいるみたいだもん。
「あ、ラッコ!」
水槽に近付いてはしゃぐ私は子どもに戻ってしまったみたい。
自分で思って恥ずかしくなるけど、久しぶりの水族館に興奮が収まらないから仕方ない。
先輩が傍で私を見て笑っているのも恥ずかしいけど、しょうがない……。
うそ。恥ずかしいに決まってる。
そのまま水槽かち割ってダイブしたいくらいには恥ずかしさでいっぱいだ。
でも良かった。ここは薄暗いからそんなに顔を見られなくて済む。
「かわいいね」
「はいっ本当にかわいい!」
「違うよ。米倉さんのことだよ?」
「へ!?」
先輩の顔を見るとバッチリ目が合った。
照れた様子もなく、素敵笑顔な先輩がすぐそこに。
思いっきり照れてしまった私はすぐさま顔を背け再びラッコを見た。
「あははっ、耳真っ赤」
「せ、先輩のせいですもんっ」
「嘘だよ。耳なんて見えないもん」
「っ!」
わ、やられた……。
確かに耳は髪で隠れてるから先輩からも見えない。やられた。
隣でクスッと笑う先輩に堪らず頬を膨らましてしまう。柄にもなく。
でもそんな楽しそうな先輩をみて許してしまうあたり私は葵生先輩が好きで甘いのかもしれない――。
「おーい、もうすぐイルカのショー始まるよ!」
その声に振り向いてちーちゃん達の元に足を進め、自然に繋がれた手に甘く胸が踊りだしたのは言うまでもない。



