「隙あり」


また悪戯に笑う先輩に顔を赤らめると頭を撫でられた。


私は段々と恥ずかしくなって顔を両手で隠す。「ごめんごめん」と子どもをあやす様に撫でるけど面白そうに笑っているのは私のせいなんだろうな。


だって先輩は私に『驚く米倉さんって見ててたのしい』って言ったんだよ。
だからよく1日1回は驚かされる。


でもこういったね、こういったことをねされると本当に反応に困ってしまうんですよ!
慣れないもん!



「先輩は意地悪なんですか」

「んーどうだと思う?」

「……っ。い、意地悪だと、思います」



くーっ。もう好きっ。
なにその笑顔っ!反則すぎでは!?

カウンターに肘をついた先輩がずいっと顔を近づけてまた私を困らせる。

今度は口に軽く触れた。


「……ここ図書室ですよ先輩」

「こっち見てる人は居ないから大丈夫だよ」


そう言って後ろを振り向くから私も後ろを覗いてみた。
人は数えられるくらいだった。
その中にはちーちゃんと恋ちゃんもいる。
けど、みんなこっちに背中を向けていた。


「もう1回してもい?」

「……先輩って好きなんですか?そのキ――」


まだ同意もしてないのにまた重なった口づけはほんの数秒長く感じた。
はじめての長めのキス。


まぶたを閉じる前、一瞬だけ見えた先輩の表情は笑っていたから、キスが好きなのかなと心の奥で思うことにする。


帰る頃にはいつの間にか心のモヤモヤは消えてた。これまた葵生先輩が私にかけた魔法のせいだと思うんだ。だって葵生先輩で心が満たされてるんだもん。