「あ、ちーちゃん私も先輩たちと勉強だから」
“またね”と手を振ってその場を離れた。
……なんか変な気持ちだ。
何この気持ち。
ものすごくモヤモヤする。
「おかえり米倉さん」
「おっかえり〜」
2人が声を揃えてそう言うように私も「ただいま」とその気持ちを吹き飛ばすように笑顔で言った。
近くには大好きな先輩がいてドキドキしているものの、視線だけは違う方へ向いてしまってる自分に何度も『集中!』と言い聞かせる。
でも。
……気になる。駄目だ。先輩の声がなんだか遠くに感じてる。
なんでか、ちーちゃんと恋ちゃんが気になって不思議でならない。
ああ、距離が近い。
2人は付き合ってるんだから当然だけど、近いものは近い。
……私ってわがままだ。
親友が幼馴染と付き合ってることに複雑な気持ちが心を乱してる。
「どうかした?」
「ぇ、あ、なんでもありません大丈夫です。……ってあれ?晴菜ちゃんは?」
周りを見渡してそう聞くと「もう帰っちゃったよ」と言ってまだ私を覗き込む。
あれもうそんな時間なの?と思いつつ、目のやり場に困っていると悪戯に笑った。
その瞬間ギュッと目をつぶって来るのを待ってしまった私はなかなか触れてこないと思い、目を開ける。
すると、ちゅっと軽く触れた。
先輩の口が。前髪の隙から覗く額に。



