つり革も握れないし、電車動いたら絶対よろける。
なんとか踏ん張れないかと足に力を入れてたら、
ぐいぐいと横から体を押されて、
その押した人物から、「すいません」って声が聞こえた。
「すいません、わざとじゃなくて」
「あ…はい」
「……ばーか。
わざとだよ。
ほら、つり革握れ」
へ?と顔を上げると、
金髪の高校生が、自分が握ってたつり革を離して「どーぞ」と指差した。
お言葉に甘えてつり革を握ったら、電車が動き出した。
あ……。
シャツ、ズボンから出してて
リュック持ってて…金髪。
この間の、助けてくれた金髪の人だ、と思うのと同時に、
「高野、くん…?」
「気付くのおせぇよ」
おそるおそる声を発したら、
返ってきたのは、高野くんらしい言葉だった。



