「俺にもたれかかっていいよ」


「じゃあ…失礼します」



遠慮がちにもたれかかったら、


つり革を掴んでない高野くんの手が、私の肩にまわってきて、ぐっと離れないように抱き寄せられた。



「た、高野くん…」


「離れたら危ないから」


「そうだけど…」



ちょっとだけ顔を上げて抗議したら、


電車がガタンっと揺れて。



「へぶっ」


「おわっ、三澤、大丈夫?」


「だ、大丈夫…」



高野くんの胸に顔面をぶつけてしまって、


いたた、って鼻を擦りながら離れた…んだけど。



「あ゛っ…」


「え、なに?」


「り、リップが…」



赤いリップのおかげで、


高野くんの制服に、赤い唇の痕がついてしまった。