山西さんに手をとられて、色んなファンデーションを試された。
その時もボーッとしたままだった私に、山西さんは何も言わずにちゃちゃっと『これ!』って決めて、化粧品を手に取っていく。
『これでいい?』って問いかけに、なんとなくボーッとしたまま、「うん」って応えた。
それから、リップ売り場に移動して
また山西さんに腕を引っ張られて、色々試された。
「これ、前にあげたやつよりは赤くないから使いやすいかも」
「…うん」
「……三澤ちゃん?」
山西さんに腕を引っ張られても、
私の視線はある一点に向いていた。
『ピンクっぽい色のやつの方が好き』
……高野くん、そう言ったことあったよね。
「……山西さん、
私、これがいい」
「これ……透明のグロスだよ?」
「これがいいの」
高野くんが
好きって言ってくれた色。