高野くんと女の人が、目の前を歩いていく。
「こちらにどうぞ」
高野くんが案内したのは、私の隣の、一つ向こうの席だった。
「注文は?」
「もう1人来るまで待ってもらっていい?」
「了解っす」
『メニュー表だけ置いときますね』と言って、高野くんはテーブルを離れた。
……常連さんなのかな。親しげだった…。
チラッと、女の人の方を盗み見たら、
その人の顔に、見覚えがあった。
あ…あの人。
昨日、高野くんを呼び止めて親しげに話してた人だ…!
もう1人って、昨日と同じ女の人かな…?
なんで今日は一緒じゃないんだろって思ってたら、
「はい、ホットコーヒー」
「……えっ!
あ……ありがとう…」
高野くんがコーヒーを持ってきてくれた。
……今日は高野くんが来てくれた。
ちょっと、嬉しい。
……だが。
コーヒーを私の前に置き、伝票もテーブルに置いたのに、
高野くんは何故か、私のテーブルから離れていかない。