そこからはお客さんが増えてバタバタしてて、三澤のもとに行く時間が全然なかった。


……てかアイツ、カフェオレしか頼んでないからもう帰っちゃうんじゃ?


忙しくて構ってやれねーし、アイツの性格だから『カフェオレ一杯で長居するのも迷惑だ』とか思ってそう。


電車で、さして混んでなくても、リュックを前に抱えちゃうとことか。


たぶんアイツチキンだから口にはしないと思うけど、人のこと気にするとこあるからな。



あーやばいやばい。今は三澤のこと考えてる場合じゃなかった。


慌ただしく店内を歩き回っていると、


「おい」と真矢に呼び止められた。



「あ?何?」


「3番テーブルちゃん、お帰りみたい」


「あ、そう」



まじか、もう帰るの?


でも一人だし、これ以上は居心地悪いかもしれねーな。仕方ないか…。



「会計、行ったら?」


「え…」


「知り合いなのに、全然話せなかっただろ?

お前に行かせようと思って、
ちょっと待ってて、って声かけといたから」