今日は三月二十一日。
ちょうど五年後の、同じ場所だ。
腕時計を見ながら時間が来るのを待つ。
「先輩」
後ろから、声がした。
慌てて振り返る。
そこには、身長が私よりも高くなっている千鳥がいた。
「おお。千鳥、大きくなったなぁ」
「先輩」
前に私が遮ったみたいに、千鳥が遮る。
「俺、誰とも付き合ってなかったですよ」
「私もだよ」
「俺、先輩よりもいい人見つかりませんでしたよ」
「私もだよ」
「俺、この日をっ、ずっとずっと、待って、ましたよっ」
「…私も、だ」
二人して涙がぼろぼろ零れてくる。
「先輩、どこにも行かないでくださいね」
「ああ」
「あんなひどいこと、もう二度と言わないでくださいね」
「ああ」
「…俺と、付き合って下さい」
「…ありがとう」
ぐしゃぐしゃな泣き顔が二人とも笑顔になった。
そして私と千鳥は抱きあって、キスをした。
「先輩、俺は可愛い物が大好きなんですよ」
「そして、集めた物は絶対に手放したくないんですよ」
千鳥は、私の耳元でゆっくりと呟いた。