もういちど初めからー塩キャラメルとビターチョコー

 やかましい!
 このくらいですんだことを幸せに思え。
 まったく。まったく。まったく!
 こんなに頭にくるやつ、ほかに知らないよ。
 悪かったな、女で。
 どうせあたしは女だよ。
「お先にっ!」
 ケンケン飛び跳ねている藤島に、礼儀正しくおじぎをして、さようなら。
 ちょっとばかし背が伸びたからって、えらそうに。
 も、今度話しかけてきたら、口がひらかなくなるくらい、ひっぱたいてやる。
 まぁアイツも、今度という今度は思い知っただろうから。
 もう金輪際(こんりんざい)、あたしに話しかけるなんて気まぐれは起こさないだろうけど。

 階段をのぼってホームに出ると電車がいた。
 いつもより1本早い電車なので列から離れて立ち止まる。
 涼子(りょうこ)が乗ってくるのは、いつもの――次の――電車だから。
(本当に)
 あんなばかのせいで、涼子ともめなくてよかった。
 時間さえあれば、あたしが絶対、アイツなんかただのアホだって。やめておけって。目をさまさせてあげられるんだから。
 涼子にわからせて、あげられるんだから。