思わず教室を見回すと、あちこちで、みんなの頭が不自然にうつむく。
(はぁ……)
 あたしって、そんなやつに見えるわけ?
 あきれかえって言葉もでない。

「それでねえ……」机に頬杖(ほおづえ)をついた涼子(涼子)がニヤニヤ笑う。
「それでレズになって、あたしにくっついてるんだって? そうなの?」
「レズゥ?」
 思わず放った大声のせいで教室中の視線をあびて。
 かえって冷静になって、冷たい怒りがおへそのあたりからこみあげる。
「…ざけんなよっ」
 おなかの底からでた低いうなり声は、もちろん涼子に向けて、ではなく。
「あんの、やろ――…」
 無責任なうわさを信じるしかない、かわいそうな級友たちに、でもなく。
 対象はただひとり。
「どこまで害虫なんだ、あのバカはっ!」
 またしても、あたしを変な立場に追いこむアイツ。