放せ!
 振っても、もがいても離れない肩の手に、身体がカーッと熱くなってくる。
「なにすんの、じゃねえよ! 今日って今日は説明してもらうからな! ……いったい、おれのなにが、そんなに気にいらねえんだ」
「…………」
 もちろんあたしは口にチャック。
 ひと(こと)で言えるか、ばかめ!
「…ったく! 実際、不愉快なんだよ。おまえの態度は、よ」
 不愉快なのは、あたしだぁ!

 (のど)の奥でぶちっとなにかが切れて。
「だったら、ほっとけばいいでしょっ!」
 言い返したとたん、まわりのことが頭からポーンと飛んだ。
「おう! だから、いやってほど、ほっといただろ、ずっと。だけど――…」
「なによ!」
「だけど、今日はおれが声をかけたんだぜ?」
「だから?」
 あんたに声をかけられたら、そんなに光栄に思わなきゃいけないの?
 ふざけるな、ばか。
「あ…の。ね、ちょっと明緒?」
 おずおずとひじのあたりをつまんでくる涼子には悪いけど。
「行こう、涼子」
 説明なんか、あとでいくらでもするから、いまは行こう。ねっ。
「待てよ、こら!」
 だれが待つか。

 これ以上ただで見せ物になるなんて、あんたはよくても、あたしはまっぴらだ。
 ああ。
 どうしてこんなことになるわけよっ!