もういちど初めからー塩キャラメルとビターチョコー

 タッチアンドゴーで改札を抜けて。
 浮かれている涼子(りょうこ)の背中をつつきながら、ずんずん、ずんずん歩き続けて。
 学校に向かう生徒の群れに、まぎれこんだところで小休止。
(どこ行った?)
 振り返ると、アイツはいた。
 すぐうしろに。

 秒で視線をそらして、涼子の手を引っぱる。
「なによぉ、明緒(あきお)。どうしたの?」
 とまどう涼子は無視して、問答無用で走るように進むと、
「待てよ!」
 いきなりうしろから肩をつかまれて、心臓が止まりそうなほどおどろいた。
(なんで?)
 振り向かなくても、それは藤島(ふじしま)の声。
(なんで、あたし?)
 藤島が声をかけるなら、それは涼子のほうにだと思っていたから、予想外のことに声も出ないまま立ち止まったあたしに、涼子もなにごとかと振り向いて。
「ふ…じ島く――」
 そこにいた藤島に、息をのんだのはわかったけど。
 ここは説明なんかしてる場合じゃない。

「なにすんの!」
 問題なのは肩の手だ。
 ひとの肩を無遠慮(ぶえんりょ)に、ガッチリつかんでいる、藤島の手。