もういちど初めからー塩キャラメルとビターチョコー

「あっ……」「あっ」
 でも、感動のご対面は、止まった電車からはきだされる人波に、一時(いっとき)おあずけ。
(ナーイス!)
 ホームにころがり出ると、涼子(りょうこ)はあたしの腕にすがりついてきた。
「ちょっと! 明緒(あきお)ってば気づかなかったの? いま藤島(ふじしま)くんいたよ!」
「ふーん」
 おざなりに返事をしながら実はあせっているあたしは、涼子の背中を押して改札口にいそぐ。
 アイツが涼子に話しかけてこないうちに。
「もう、どうしよう、明緒。バッチリ目があっちゃった、あたし」
「ヘー」
 口元にげんこつをあてて、くすくす笑う涼子の(ほほ)がピンクに染まっている。
 こんなときなのに、思わず見とれちゃうかわいらしさだ。
 だから絶対、涼子のこんな顔は藤島には見せない。
 猫にかつおぶし、女ったらしに飛んで火に()る夏の虫!
 早く! 早く!