もういちど初めからー塩キャラメルとビターチョコー

「……うす」
 言いかけたのがなんにしろ、次に出てきたのは4年ぶりの会話にはおよそふさわしくない()の抜けた朝のあいさつ。
 あたしはもちろん返事をしない。
 だから、あたしの肩ぐちでうつむいて、藤島(ふじしま)に背を向けている涼子(りょうこ)には、この状況はわからない。
「まいったぜ。寝坊して――…」
 だから、どうした!
 もったいつけないで、サッサと本題に入ったらどうなんだ。
 涼子はここにいるんだから。
 もっとも、あんたが声をかけなきゃ気がつきゃしないけどね。
 ほら。
 もう駅につくぞ、ばか。

「めずらしいじゃん、ひとりなんて。車両もちがうし……」
 えっ?
(それって……?)
 深く考えるヒマはなかった。
 アナウンスが、あたしたちの降りる学園前駅の名前を告げて。
 ドアのほうに向かうひとの流れに押されて、涼子が藤島のほうを振り向いたから。