もういちど初めからー塩キャラメルとビターチョコー

「ちょっとぉ。ひとが真面目に話してるのに、なに、ちゃかしてるの?」
 唇をとがらせて、あたしの腕をつねる涼子(りょうこ)は、にっこり笑っているときより百倍かわいい。
(あげないからね!)
 頭のすみに、ポカンと浮かんだのは藤島(ふじしま)の顔。
(あんたなんかに、あげないからね)
 そう。藤島のバカなんかには、絶対、あげない!
 たとえアイツが本気だって。
 ううん、アイツが本気なら、なおさらジャマしてやる。
 あたしから、楽しい時間をごっそり奪っていって、今度は友だち?
 そんなのは許さない。
(でも――…)

「きゃっ」電車が揺れて、うしろのだれかに押された涼子があたしにしがみつく。
「ごめーん、明緒。大丈夫?」
「うん。あぶないから、あたしにつかまっときな」
 でも、あたしにできる…かな。
 涼子が、それでも藤島がいいって言ったら――。
 友だちなのに。
 それでもふたりの仲を()くなんてこと、あたし、本当にできるんだろか。
(はぁ……)
 鼻をくすぐる涼子の髪とシャンプーの匂いから、顔をそらすように天井を見て。
 もどした視線でソレに気づいた。