「ねえねえ、彼、けっこう明緒のシュミでしょ」
さっきあたしをとがめたことなんか、すっかり忘れた顔で涼子が笑う。
あたしのシュミ?
(よくも、まあ……)
涼子は気づいてないみたいだけど。
涼子の選ぶ男の子は、いつだって、どこかしらがアイツに似てる。
それであたしの点数も、キビシくなっちゃうんだけど……。
(あああ、もう!)
「35点」
「ええー。どうして? けっこうカッコイイじゃないのぉ」
「けど。吊り革に頭も届かないようなチビじゃんか」
(ああ……)
自分がなさけない。
関係ない男の子にやつあたりしたりして。
「んもう! でたわね、でたわね。明緒のチビ、デブ、バカ」
涼子が不満そうに唇をとがらせる。
自分なんか、いつだってもっとヒドイことを平気で言うくせに。
「はぁ……。もう、やめよ。涼子」
このままいったら今日は、めちゃくちゃヒドイことを言いそうで、なんかやだ。
「ほんとにもう。理想が高すぎるのよう、明緒って」
「…じゃなくってぇ。いらないの! カレシなんて」
わかんないのかなぁ、そこんとこ。
「どーしてぇ? 男の子、きらいなの?」
うっ。
「そんな…こと、ない…けど」



