もういちど初めからー塩キャラメルとビターチョコー

 くやしいけど。
 負けた…って思わせてくれる男の子じゃなきゃ、あたしは認めない。
 あたしは、あたしでいるために、ちゃんと努力してるんだから。
 おちんちんがあるってだけで、えらそぶってる男なんて、くそくらえだ。

「まあ、いいわ。じゃ、次ね」
 すねた声で言って涼子(りょうこ)が首をめぐらせはじめる。
「もうやめようよ、涼子」
「どうして? せっかくあたしが明緒(あきお)のカレシくんを探してあげてるのに」
「でも――…」

 名前も知らない子の好ききらいなんて、結局、外見で決めるしかないんだから。
 そうしたらまた、あたしは涼子を怒らせて……。
 ばかみたいじゃない、そんなの。
 だいたい、こんなことをしてると、男ってやつに腹が立つばかりだ。

「ね、明緒。彼は?」
 涼子があごをしゃくっただけで、どの子のことを言っているのか、すぐにわかる。
 なぜって、沿線で評判の、超絶美少女・(あずま) 涼子に見つめられた男の子たちは、みんな一様に真っ赤になってうつむくから。
 こっそり見つめていたのに見つめ返されて。
 あげくにじーっと見つめ続けられたら、そりゃあドギマギしちゃうのも無理はない。
 そんなふうに、いつもだったら、お気の毒と思えるはずの彼らの赤面に、今日はイライラ。
 それでも男か、おまえらは。
 見つめ返してみろ!
 声をかけてきてみろ!
 つきあってくれとか、言ってきてみろぉ――っ!
 おまえらがそんなだから、涼子は全然、男の子とつきあった経験がなくて。
 経験がないから、あんな…あんな……、藤島(ふじしま)なんかにイカレちゃうんだ!