もういちど初めからー塩キャラメルとビターチョコー

 くるっと背中を向けると
 「おれ…」
 慎吾(しんご)の声が追いかけてきた。
 遠い街灯の明かりで延びたあたしの影が、うつむいた慎吾の胸にかぶさっている。
「おれ」慎吾がゆっくり顔をあげた。
「そんなこと、考えもしな…かった」
 うん。
 きっとね。
 あたしも涼子をひとりぼっちにするまで、わからなかった。
「おれ、おまえに負けたく…なかったんだ! おまえに負けて――、みっともないとこ見せるの…いやだったんだ。――それが、そんな……」
「慎吾」
 もう、いいよ。
 首を振るあたしを、慎吾がよせた眉毛のしたから、じっと見る。
「許してくれるのか?」
 うん。
「でも今度はちゃんと見せてよね。負けても、あたしは一所懸な慎吾が…好きだよ。あきらめない慎吾は……かっこよかった」
「そんなこと言うな!」慎吾がくるっと背中を向ける。
「3度もふられて。もういいかげん、くじけそうなのに…よ」
「…………」
 不思議と笑う気にはなれなかった。
 ちょっと、困ったなって…思っただけ。

「あー、そうすると、4度めはない、わけ…か」
 まあ、それならそれでいいんだけど。