もういちど初めからー塩キャラメルとビターチョコー

「な…んで、おまえが、謝るんだよ!」
 いまは慎吾(しんご)がつらいから。
 慎吾はいつだって、先に謝ってくれたから。

「あたしもちゃんと友だちにもどったから。そんな顔…しないでよ」
 所在なさげにたれていた慎吾の手に、ボールを押しつける。
「今日は、かっこよかったよ」
 あたしが心から告げたお別れのあいさつに、慎吾がぷいっと横を向く。
 わかってないな。
「勝ったとか負けたとか、そんなことじゃなくて。最後まであきらめなかった慎吾が、かっこよかったって、そう言ってんの! 素直に聞けば?」
「…………」
 それでも黙っている慎吾に、
「じゃ…」
 小さく手を振って、さよならをする。

 またひとつ積みあがった思い出を、あたしはもう倒さない。
 倒したくないから。