もういちど初めからー塩キャラメルとビターチョコー

「やーい」
「ちょ…、こら、明緒(あきお)
 慎吾(しんご)はドリブルで遊ぶあたしの足元に、すっすっと足を出してくるけどボールは取らない。
 わかってる。
 もう本気であたしなんかと遊べるレベルじゃないから、けがをさせたくないんだ。
「どした? 噴水のなかに()っちゃうぞ」
 からかってやると、むっとした慎吾が思わずみたいに本気でステップして。
「うわっ」
 ボールを奪いに来た慎吾の足につまずいて転びそうになったあたしを、慎吾があわてて支えにきた腕に、ぱしっと平手でおしおき。
「いらん」
「悪い、つい……」
 うん。
「やっぱ、もう、かなわないなぁ」
 不思議にくやしくなくて、笑いがこみあげてきた。
 ゆっくりかがんでボールを拾い上げる。
「ね、慎吾。どうして慎吾は、あたしを仲間はずれにしたの?」
「えっ……?」
「サッカーだって、野球だって、あたしはちゃんと…できたでしょ?」
「あき…お?」
 あたしを見つめる慎吾の目は、わけがわからなくて、本当に困って揺れている。
「そっか……。そうだよね。慎吾はそんなこと、おぼえてやしないよね」

 16歳らしく、ちゃんと冷静に伝えられるはずだったあのころの気持ちが、おへそのあたりからブワッとこみあげた。