もういちど初めからー塩キャラメルとビターチョコー

「ボール、持ってきた?」
「きた…けど――…」
 突然、夜の噴水公園に呼び出された慎吾(しんご)は、まだとまどっている。
「特訓とか、やめてくれよ?」
「…………っ」
 ふきだしていた。
 慎吾が、あんまりマジな顔で、イヤそうに言うから。
「なんだよ。どうせ、みっともねえ…とか、頭にきてんだろ? ……ちぇっ。見に来いなんて言うんじゃなかったな」
「でも…」
 止まらない笑いを、(のど)をつかんでおさえる。
「それでも、あたしに見てほしかったんでしょ? いまの慎吾を、さ」
「…………」
 笑いをふくんでしまった声に、(くちびる)をとがらせた慎吾の視線が、ボールといっしょに地面に落ちた。
「ねっ?」
 だめおししたのは、そのスネた表情がかわいかったから。

 1歩、2歩、近寄って。
 慎吾が足でもて遊んでいるボールを、横からちょこんと爪先ではじいて奪ったのは、もう一度、やり直すため。
「あっ」
 慎吾は、即座に足を出した。
 さすがだ。