もういちど初めからー塩キャラメルとビターチョコー


 必死でボールを味方の攻撃につなごうとしてる慎吾(しんご)には、あたしの声援なんかいらない。
 わかってる。
 ここにいる慎吾は、あの、チビで、のろまで、気が弱くて。いつだってあたしのあとをついてきていた、あたしの子分だった慎吾とちがうんだから。

 でも、
 だから、あたしも自分をごまかさない。
 いま、ここにいるきみに、どうしようもなくひかれていること。

 だって、
 あたし、負けたくないよ。

 きみはこんなに強く、たくましくなったのに、あたしだけがムカシのままの明緒(あきお)ではいられない。
 きみに仲間はずれにされて。
 どうして? って、むかっていくこともできずに、ただ傷ついた……。
 本当は弱虫のくせにプライドだけは高い、おばかさんのあたしじゃ、いられない。

 わくわくと、ドキドキと。
 きみの姿を追いかける、いまのこの気持ちの名前は知らないけど。
 いつかおきる、つらいことを考えるより、いまはこの気持ちを大事にしたい。

「行けぇ――っ! 慎吾っ!」