もういちど初めからー塩キャラメルとビターチョコー


 たとえ(ひか)えの選手でも、ハタチくらいの人もいるメジャーチームのひとたちには、勝てなくて当然なのかもしれないけど。
 同い年くらいの男の子たちが負けるのはくやしくて、慎吾(しんご)だけは見ないように見ないように、ユースチームを応援していたあたしの目は、気がつくと慎吾に吸いついていた。

 力負けしちゃうディフェンダーと、攻めきれないフォワード。
 そんな歯がゆいチームのなかで、慎吾だけがボールに食らいついていたから。

 学校で見たときとちがって、慎吾がしてるのは守備的なミッドフィールダー。
 地味で、テレビのニュースなんかには、ほとんど出てこないポジションだけど、本当はものすごく大事な、おへそのポジション。
 となりでキャーキャー言ってる、たぶんメジャーチームの選手の追っかけさんたちには、たとえ慎吾がプロになっても、そのプレイを見てもらえることはないかもしれないけど。
 カメラも、声援も、なにも向かないところで慎吾は走っていた。

 あの、気が弱くて、いつだってボール拾いをやらされていた慎吾が、プロの選手の足元に、思わずハッと息をのむようなスライディングをしかけていく。
 あっという間に折り返される攻撃に、大声で指示を出して、味方を動かしている。

 ボールを前線に送っても送っても点の取れない、一秒ごとに気力がなえていくような展開のゲームのなかで、慎吾だけが前を向いていた。
 チャンスをうかがって。
 一点でも返そうって、叫んでいた。
(ああ……)
「が…んばれ」
 走れ! ぶつかれ! 止めろ!
「慎吾――っ!」