もういちど初めからー塩キャラメルとビターチョコー

 しばらく音をたどって進むと植えこみがとぎれて、高いフェンスに囲まれた芝生のグラウンドの横に出た。
「あらぁ? サッカーやってる。なんだろ、ここ。こんなところに学校あったっけ?」
 背伸びしてフェンスのなかをのぞきこむ涼子(りょうこ)には答えずに、カメラを持った子が何人か集まっている、見晴らしがいいところに移動した。

「うーそ、明緒(あきお)。ここが目的地なの? あなたまさか、このあたしに、草サッカーなんか見せようっていうんじゃないでしょうね。冗談じゃないわよ、Jリーグならいざ知らず」
「一応、Jリーグなんだけど」
 あたしがつぶやくと、涼子がフェンスに駆け寄った。
 まじまじと、フェンスの向こうの芝生のうえで、ボールを()っている選手たちを見る。
「んもう! どうせうそつくんなら、もっとマシなうそつきなさいよ明緒。知ってるひとひとなんて誰もいな…」
 息を飲んだ涼子があたしを振り返ったのは、たぶんあたしが見つけたように、そこに慎吾を見つけたからだ。

 ずっと前、学校のグラウンドで見つけた慎吾と同じ、ううん、それ以上に真剣な顔をして仲間と短いパスをくり返している慎吾を。
「…………」
 涼子は、なにも言わなかった。
「…………」
 あたしには、なにも言うことはなかった。
 だから、そのままフィールドを見ていた。
 22人の選手がセンターサークルに集まりはじめたフィールドを。