「んもう! 明緒(あきお)が日曜に誘ってくれるなんて初めてだから、黙ってついてきたのにぃ。なあに、ここ? 遊園地はあっちよ? 道をまちがえた?」
 きょろきょろしている涼子(りょうこ)は気がついていないみたいだけど。
 どこからか、かけ声と、ボールを()る音がする。
「ねーねー明緒。腕を組んで…いい? あたし……、歩き疲れちゃったかも」
「――いいよ」
 学校ではあたりまえになっていることを、わざわざ聞かれて少しとまどう。
「でも明緒、今日おしゃれだから、ちょっと――恥ずかしいな」
 え。
 (ほほ)が熱くなってしまうのは、今日は機能性重視の通学では着ない、エコスエードのジャケットを着ているから。

 あとでうそがばれてからかわれるより、最初に本当のことを言っておこうと、母さんには慎吾(しんご)の試合を見に行くと言った。
 あげくに始まったファッションショーで、母子が妥協(だきょう)したのはブルーの開襟(かいきん)ブラウスに、ウエストをひもで縛るタイプのジャケットで、勝負服感がハンパない。
「明緒もデートだって……、思ってくれ…た?」
 上目づかいに見られて返事につまる。