もういちど初めからー塩キャラメルとビターチョコー

「おまえが、悪いんだ」コドモみたいにふてくされた声が…言う。
「お…まえが、冷たいから」
「…ちょっ」
「好きだったのに」
「…………」
 ふいうちの告白に身体から力がぬけた。
「おれ、好きだったのに」
 くりかえされて、背中のどこかがキュン。
 棒立ちのあたしの頭に、慎吾(しんご)が頭をこすりつけてる。
「ちょっ…、慎吾」
 離れようとしたあたしの身体は、どこも動かなかった。
 動いたのは慎吾のほう。
 背中にまわしている腕で、息が止まるほどあたしの身体をしめつける。
 髪に慎吾の息がかかるのを感じて、
(ああ、お風呂に入っておいてよかった)
 とんでもないことを考えて、自分でぎょっとした。
(ちがう! ちがう!)
「は…な、せ!」
 こんなのが友だちなんて。
 あたしでもわかる。
 絶対、ちがう。
「慎吾!」
 過去形の告白で、あたしの気持ちを動かそうとしたって、ちがう。
「慎吾っ!」
 これが最後と決めたあたしの命令に、ちゃんと気づいた慎吾の腕は、ゆっくりあたしから離れていった。