もういちど初めからー塩キャラメルとビターチョコー

 なにもわざわざ、こんなふうにいっしょに歩いてやることないんだから。
 きっちり無視して、家に入ればよかったのに。
(あああ、もう!)
 帰ろう!
 思ったとたん、横からニュッと腕が伸びてきた。
「食うか?」
 はぁあ?
 慎吾(しんご)のでっかいてのひらにのっかっていたのは、キャラメル入りのチョコボール。
 こんな子どものお菓子……なに?
「いや、ちょっと、ワイロ。――好きだったろ?」
「…………っ!」
 思わずバシッとたたき落としていた。
「なにすんだよ」
「いーいかげんに、しろっ」
 背中を向けたとたん、ガシッと手首をつかまれた。
 放せ! 放せ! 放せ!
 腕をふりまわしていると、ガシャン! 慎吾の自転車が倒れて。
「あ…!」
 信じられない!
 あたしは慎吾の腕のなか。