あたしはそこらの男子くらい背が高い。
 球技も得意だ。
「でもさ」
 それとこれとは別でしょ?

 卓球ボールでも持っていってやろうかしら。
「あ。カゴに入ってないからだめか。アタマいいな、先生」
 つぶやいていたら背後で小さな笑い声。
「またなんか押しつけられたのか」
 慎吾(しんご)だ。
「――ボール持ってこいって」
 返事をするのは、いまはもう無視してしつこくされるより、するっと流すほうがめだたないと知ったからだ。
「ひとりで? ひでーな、女子」
「…………」
 まぁ、その意見には賛成だ。
 そもそもやる気のない子たちに命令しても、ちんたら時間がかかるだけだと知っている先生も正しいし。
「バレーボールだろ? 運んでやるわ」
「……ぇ……」
 そんなこと頼んでない!
 むっとして立ち止まったあたしの横を、さっさと過ぎた慎吾が倉庫に入っていって。
 むっとしている間に、白いボールのつまったカゴを片手で押してもどってきた。