そう言った後に、おうくんは一歩前へと進んだ。
「あんた、珠華に邪魔だと言ったんすよね? 出てけって言ったくせに、出て行ったことに腹を立てるなんて、意味わかんね」
お父さんの目が、キッと細くなった。
「このガキはなんだ、初対面で目上の人に敬語もなしなのか、お前は」
「言っとくけど、俺が珠華を家に置いてるのは、あんたと違うから」
「何が違う」
「俺はあんたと違って、珠華が大切なんでね?」
おうくんが言った後に、お父さんは拳を握ってわなわなと震え出した。
……えっ、殴られる……?
「俺のこと殴りたいんだったら、好きにどうぞ? こう見えて俺、あんたにはガキにしか見えねーかもだけど、喧嘩はいっぱいしてきたんで」
「だ、ダメッ!」
気づかない間に、わたしの手は、おうくんの服の袖を握っていた。
「珠華は下がってろ」
おうくんが傷つくのは嫌だよ……。
「おうくんの体には傷なんてついてほしくないよ……」
「あれ? 殴るつもりない? じゃ、帰ります! 俺、正直腹減ってるんで。珠華のうまい飯が食べたいし。珠華、帰るぞ」
「あっ……うん」
おうくんはわたしの腕を、家まで引っ張っていった。



