‟コンコン”


 まずは小さめにノックをして。


 ‟ガラッ”


 静か~に教室の戸を開けた。



 いくら静かに戸を開けても、予想通り、先生とクラスメートたちの視線が一斉に集まった。

 そしてシンと静まり返っている。

 その静けさに圧倒されそうになるけれど、まずは先生に謝らなければならない。

 そう思ったとき。


「麻倉さんっ、大丈夫っ?」


 先生がそう声をかけてくれた。


「はい」


 私はそう返事をした。


「そう、よかった」


 私の返事に先生は安心した様子だった。

 先生が先に声をかけてくれたおかげで、私は少しだけ話しやすくなった気がした。


「あの、先生、突然、教室を抜け出してしまって、ご迷惑をおかけして大変申し訳ありませんでした」


 私は先生に申し訳ない気持ちを伝えた。


「そんな気にしなくていいのよ。それより麻倉さん、体調はどうなの?」


 先生は私の体調を気遣ってくれた。

 先生、ごめんなさい。
 本当は体調が悪くて教室を出たわけではないの。


「はい、だいぶ良くなりました。ありがとうございます」


 私は負い目を感じながら先生にお礼を言った。