「あっ、そうだ、希空ちゃん」


 突然、真宙くんが何かを思い出したように言った。

 私が真宙くんに『なぁに、真宙くん』と訊く間もなく、真宙くんは話を続けた。


「希空ちゃん、先生に何か言われたら、って、言われるよね。そのときはオレに無理やり連れてこられたって言うんだよ」


 真宙くんは私にそう言った。

 けれど、私は真宙くんに無理やり連れてこられたわけではない。

 だから。



「何言ってるの、真宙くん。真宙くんと一緒に教室を出たのは、私の意思で決めたことだから。真宙くんに無理やり連れてこられたわけではないから」


 私は真宙くんにそう言った。