そんな会話が耳に入らないくらい、私は羞恥心にやられていた。
漣さんには申し訳ないけれど、恥ずかしいより、痛いの方がマシだと思った。
一つの部屋の前に着いて、漣さんは私をそっと下ろしてくれた。
「あ、ありがとうございます……」
お礼を言うと、漣さんは微笑んで私の頭を撫でた。
「雪ちゃん、この後ちょっと大変だと思うけど……大丈夫?」
「あ、はい。全然大丈夫です」
これからお世話になる以上、ちゃんと挨拶しないといけないし。
漣組の組長とか、今まで縁がない人たちだったから少し、いや結構緊張するけど。
「親父、来たぞ」
漣さんはイラついているような低い声を出した。
「ーー入れ」
少しの間を置いて、漣さんよりも低く威圧的な声が聞こえてピクリと身を震わせた。


