もちろん、時間が無いのは本当なのだろう。
言われた爽介さんも、うっ......と言葉に詰まっている。
どうしても、送っていくと言いたいのだろう。
何かと格闘しているような表情をしていた。
「それに、湊先生。その資料を催促されてますよ?」
お姉さんが指さした方には、昨日挨拶したうちの1人の先生が、柱の影に立っている。
きっと、早く資料持ってこいと言いに来たけれど、この訳分からない甘い雰囲気に入って来れなかったのだろう。
というよりも、入りたくないのだろう。影からこっそりとこちらを見ていた。
「はぁ......」
ダメか、そう呟いた爽介さんは、少し屈んで私と目線を合わせる。
まっすぐ見られるその真剣な顔に、少しドキッとしたのは仕方ないだろう。
「送ってあげられないけど、帰れる?」
言葉からも表情からも、本当に心配されていることが伝わってきた。
きっと、これがデートの帰り際とかならきゅんとするシーンなのだろう。



