名刺には、<昔の爽介の事なら何でも教えるよ。いつでも連絡して>と走り書きのメモもある。


男の人に恋愛相談するのも躊躇するけれど、爽介さんのことをなんでも聞いてと言っていたし、挨拶した時、結婚した経緯も知ってそうな雰囲気だった。


ちょっと聞いてみて、知っているなら相談してもいいかもしれない。


知らないなら、昔の爽介さんのことを少し聞いて誤魔化そう。


そう決めた私の行動は速かった。

もちろん、爽介さんは仕事だから、村本さんも仕事をしていると思う。

空いている時間にでもと、まずはアポを取りたい。


名刺に書いてある番号を入力し、発信ボタンを押した。


数回のコール音がなった後、プツッと切れて男の人の声が聞こえてくる。



『はい。村本です』



知らない番号からかけた所為か、挨拶した時のような雰囲気ではなく、少し尖った感じの声だった。


ちょっと、怖さも感じる。



「えっと......あの、爽介さんの妻の......」