太ももが触れるくらいの距離まで......。
「だ、だめです!」
これ以上は、だめだ。
この訳の分からない甘い空気に呑まれてしまう。
ハッとした私は、手を離して、少し距離を開けた。
そして、落ち着こうと、深呼吸を繰り返す。
「え、映画見ましょう!」
正直いって、映画の内容なんて頭に入ってくるはずもないのだけれど、これ以上はだめだと思い、映画に逃げた。
爽介さんが手を伸ばしかけたのを感じたけれど、気付かないふりをする。
その手は、私に触れる前にゆっくりと元の場所に戻って行った。
ちょっと寂しそうな雰囲気を感じたけれど、気にしたらダメだ。
私たちは、夫婦だけれど、家政婦と雇い主でもあるのだからーー。
それに、お義母様やお姉様が言っていた事もある。
その人物と私を間違えているのだったら、爽介さんとの距離が近くなるほど、きっと私は、寂しくなってしまう。
それに、爽介さんに後悔はして欲しくない。



