入ってきた勢いが凄かったから、何を言われるのか身構えてしまったけれど、よく分からないことを言われて、思わずキョトンとする。


あの時って、どの時?

私は爽介さんを助けた覚えも、救った覚えもない。

私のことを、誰かと間違えているんじゃーー。


そう思って、爽介さんとはこの間会ったばかりなので、きっと違う人だと思います。

そう私は訂正しようと口を開く。



「コラっ、春妃(はるひ)」



だけど、私の訂正よりも先にお母様が、さっきまでの穏やかな感じを一切出さずに言った。


それを聞いたお姉さんも、しまったという顔をしている。

二人の間では、なんの事なのか分かっているらしい。

知らない私は置いてけぼりだけれど、爽介さんを誰かが救ったという話を、本人以外から聞いていいのか分からないから、話に入ることもできない。


どうしたらいいのだろう。

少しのあいだ、部屋の中は沈黙が続いていた。