『ごめんね、果歩』
『何言ってんの! お安い御用よ。それに』
『それに?』
『このBMWが気に入ったら、今後も好きに乗っていいって。欲しかったら名義変更もしてくれるって。もちろんタダで』
無類の車好きである果歩の目は、嬉しそうに輝いていた。
律さんにとって、高級車の1台や2台、大したことじゃないのだろう。
庶民の私では理解できない金銭感覚だけど。
この計らいで、病院に早く駆けつけることができた。
もし、律さんがいなかったら……。
私はもっと取り乱していただろうし、迅速に動くこともできなかった。
律さんがいる。
お陰ですごく今、心強い。
――――カチャ、カチャ
どれだけ眠っていたのだろう?
玄関のドアを開ける音で目が覚めた。
律さんが帰ってきたらしい。
「……おかえりなさい」
「起きてたのか?」
「今、起きました」
「そうみたいだな、顔色が良くなってる」
咄嗟に、頬に手を当てる。
そんな私を見て、律さんは口元を少しだけ綻ばせた。
「ハナさんの容体は安定している。とりあえずの峠は越えたそうだ」
「……よかった」
「明日の朝、病院に送って行く」
「律さん、ありがとうございます」



