「ね、さっきからずっと鳴ってない?」
不意に果歩が、私のスマホを指さした。
「え?」
視線を向けた、まさにその瞬間、ブルブルと振動する。
そういや、果歩が来るからとマナーモードにしたんだった。
着信の相手は、律さん。
にやけた顔でスマホを覗き込む果歩を押しのけ、画面をタップした。
「はい」
『今、どこだ』
「家です、友達が来てて」
『病院から何度か連絡あっただろ』
「病院?」
『見てないのか? ハナさんの容体が急変したそうだ』
「え!」
思わず大声を出す。
果歩が心配そうに、私の顔を見つめている。
『俺も今病院に向かってるから、そっちには迎えを……いや、タクシーを捕まえた方が早いな』
どうしよう? ハナちゃんが急変?
昨日の朝行ったときは、安定しているように見えたのに。
『……百花? 聞いてるか』
「あっ、あ、はい」
『しっかりしろ、大丈夫だ。俺も行くから』
「律さん……」
『友達はそこにいるのか? 変わってくれ』
言われるがままに、スマホを果歩に渡す。
彼女は一瞬驚いた顔をしながらもスマホを受け取り、「はい」「はい、」と返事をしている。
ハナちゃん、どうか……。
まだ逝かないで。



