誠に不本意ではございますが、その求婚お受けいたします


* * *


「夏川さん、この資料お願いしていい?」

「分かりました」

「データは、こっちのを参考に……」

「だいたい分かるから大丈夫ですよ」

「助かる!」


そうか、この会社で働き出してもう3年になるんだ……。
母が病気になり看病をするために正社員から派遣社員に変わったけど、仕事は好きだし人間関係も1部を除いて上手くいっている方だと思う。

それがいざ、終わりとなると寂しくなるかな?
というか、また新しい会社で一から仕事を覚え直すのは大変。
でも、お店を継続させるためには昼の仕事を辞めるわけにいかないしなぁ。

(うーむ……ん?)

考え事をしながら仕事をしていたせいで周りが見えてなかったが、何となく慌ただしい雰囲気であることに気が付いた。
リーダーである鈴木さんがあちらこちらに指示を出しては、頭を搔く。
もしかして、ピンチな状況?


「鈴木さん、資料まとめました」

「あぁ、ありがとう!」

「あの、何かお手伝いできることがありますか?」

「え? あ、いや、そろそろ17時なんであがっていいですよ」

「さすがにこういう状況では帰れません。指示をください」

「夏川さん……! ほんっとうに助かります! ありがとう」